今後の活動
私は二十代の頃、中国武当山に古くから伝承されてきた太極功の一つである武当導引(太極導引)を学び、印可を受けました。
以来、その体系は日本の方にも分かりやすいように「太極整体」という名前で伝え、長年にわたり門下生の指導や、必要とする方々への身体調整を続けてきました。
しかし、この技法は門外へ広く公開することはありませんでした。
理由は、その理論と実践があまりにも緻密で奥深く、一冊の専門書にまとめたのですが、読み物としては難しすぎる内容でした。そこで、今はまだ出版には至っていませんでした。

そんな私の考えを大きく変えた出来事がありました。
NHK全国放送『明鏡止水』への出演です。
私は約二か月間、番組制作に携わり、太極整体の身体原理をどのように伝えれば、多くの人に理解していただけるのかを、制作スタッフの皆さんと共に考え続けました。
その中で、一つの確信が生まれました。
太極整体は高度な身体技法ですが、その入口は決して難しいものではないということです。
誰もが毎日行っている「ただ立つこと」。
そこからでも、人は本来の身体を思い出し始めることができる。
そのことを私自身が改めて実感させてくれたのが、番組の中で日向坂46の正源司陽子さんに行った太極整体と、その後に寄せられた多くの反響でした。
私は決意しました。
これまで限られた人だけに伝えてきた太極整体を、社会へ開いていこうと。
一人でも多くの人が、本来持っている身体の力を思い出し、健康で豊かな人生を歩めるように。
その願いを込めて、太極整体を一歩ずつ、丁寧に社会へ伝えていきたいと思います。
太極整体を社会へ
立つこと。
歩くこと。
呼吸すること。
人を支えること。
自分自身を支えること。太極整体は、こうした日常の基本動作を通して、人間が本来持っている身体の働きを思い出していくための体系です。
これから、この理論と実践を、書籍・ホームページ・映像・講座など、さまざまな形で広くお伝えしていきます。
どうか、多くの皆さまと、この新しい一歩をご一緒できれば幸いです。
NHKの全国放送で示した、太極整体の入口と終点
太極整体の理論を、多くの方に初めて目にしていただく機会となったのが、NHKの武術番組『明鏡止水』でした。

(明鏡止水 武のKAMIWAZA FIFA ワールドカップ スペシャル 初回放送日NHK総合テレビジョン6月5日(金)午後10:00)

番組では、太極整体の最初の入口である「立つこと」と、その先にある太極拳の身体の可能性をご紹介しました。
一見すると、そこには大きな隔たりがあるように見えます。
一方には、ただ静かに立つ人がいます。
もう一方には、強い身体を持つアスリートを、ほとんど力を使わずに崩す身体があります。
しかし、この二つは別々のものではありません。その間には、同じ一つの身体原理が流れています。太極整体は、その原理を特別なものにせず、誰もが自分の身体の中で確かめられる形へとひらいていく試みです。
今後の活動予定
太極整体に関する執筆
太極整体の考え方と実践を一般の方にも分かりやすく伝えるため、現在、書籍化に向けた原稿の執筆・整理を進めています。
まずは「ただ立つこと」を入り口に、日常の身体の使い方を見直すための入門書を目指しています。将来的には、理論や指導法を詳しく扱う書籍も構想しています。
書籍では、姿勢や歩き方、呼吸、重力との関わり、支持基底面、内勢、衝脈、身体操作、太極拳、整体理論など、人間の身体を一つの統合された仕組みとして捉え、写真や図解を交えながら分かりやすく解説出来ればと思っています。
太極整体が目指しているのは、単に不調を改善するための技術や、特別な能力を身につけるための方法ではありません。
人間が本来持っている身体の働きを理解し、その力を日常生活や健康づくり、介護、スポーツ、武術など、さまざまな場面で自然に活かせるようになることを目指しています。
初めて身体を学ぶ方にも読みやすい入門書から、古から伝承されている理論をまとめた専門書まで、太極整体という体系を多角的に学べる執筆活動を行っていく予定です。
YouTubeなどによる映像発信
身体の感覚は、文章だけでは伝わりにくい部分があります。
そのため、YouTubeでは、太極整体の基本的な考え方や実践方法を、映像で順次ご紹介していく予定です。
予定している主な内容は、次のようなものです。
* ただ立つとはどういうことか
* 軽いジャンプと自然な着地
* 落胯の見つけ方
* 足の裏と支持基底面
* 重力を身体へ通す方法
* 胸を張らずに身体を起こす
* 予備式から起勢へ
* 歩くときの全身の連動
* 人を支えるときに力まない方法
* 内勢によって生まれる静かな強さ
* 太極拳の原理を日常へ生かす方法
映像では、完成した動きを見せるだけでなく、どこで身体が崩れやすいのか、何をすると力みが生まれるのかも、できるだけ具体的にお伝えします。
SNSでの継続的な発信
SNSでは、太極整体の考え方を、短い文章、写真、図解、短編動画などで継続的に発信していきます。
日常の中ですぐに試すことのできる小さな身体のヒントや、太極拳に伝わる言葉の意味、書籍の制作過程、講演会や体験会のご案内などを掲載する予定です。
一度読んで終わる情報ではなく、今日、立つときに少し思い出す。
歩くときに一つ試してみる。
そのように、日常の中で少しずつ身体へ戻っていける発信を目指します。
講演会
太極整体の考え方を、身体の実演を交えながらお伝えする講演会を予定しています。
講演では、単なる姿勢改善の話にとどまらず、人間の身体が重力とどのように関わっているのか、なぜ力むほど身体が不安定になるのか、なぜ足の裏と地面の関係が大切なのかなどを、分かりやすく解説します。
実際に人へぶら下がってもらう実験や、軽く跳ぶ前後で立ち方を比較する体験などを通して、身体が変化する瞬間をその場で確かめていただきます。
健康、介護、スポーツ、教育、企業研修など、それぞれの場に合わせた内容での実施も検討しています。
太極整体体験会
少人数で実際に身体を動かしながら学ぶ体験会も開催する予定です。
難しい型や激しい運動は行いません。
立つこと、軽く跳ぶこと、足の裏を感じること、腕を上げること、歩くことなど、誰もが日常で行っている動作を使って、身体がどのように変わるのかを確かめていきます。
体験会では、正しい形を覚えることよりも、自分の身体の変化に気づくことを大切にします。
「さっきより立つことが楽になった」
「人に押されても力まなくなった」
「足が地面へつながった感じがする」
こうした小さな発見が、本来の身体へ戻る入口になります。
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指導者・実践者の育成
今後は、太極整体の考え方を正しく理解し、それぞれの地域や分野で伝えることのできる実践者や指導者の育成も検討しています。
ただ手順を覚えて人に教えるのではなく、まず自分自身の身体で原理を確かめることを大切にします。
太極整体は、誰かが一方的に身体を直す方法ではありません。
相手の身体が自ら整っていくためのきっかけを示し、本人が自分の身体を発見していくことを支える方法です。
そのため、指導する側にも、相手を型へはめ込まず、身体の声を丁寧に見守る姿勢が必要になります。
医療・介護・スポーツ・教育分野との連携
太極整体の身体原理は、健康づくりだけでなく、さまざまな分野に応用できる可能性があります。
高齢者の立位や歩行。
介護する人とされる人、双方の身体的負担。
競技スポーツにおける姿勢と全身連動。
子どもの身体感覚と姿勢。
仕事中の慢性的な緊張。
音楽、舞踊、演劇における身体表現。
今後は、それぞれの専門家と対話を重ねながら、太極整体の考え方を現場へどのように生かせるかを探っていきたいと考えています。
なお、太極整体は医療行為や疾病の治療を目的とするものではありません。身体の使い方と感覚を見直し、日常動作をより自然なものへ近づけていくための実践体系です。

海外への発信
太極拳は世界中で知られていますが、その多くは健康体操やゆっくりした運動として理解されています。
しかし、その背景には、重力、骨格、呼吸、意識、地面との関係を一つに結ぶ、深い身体文化があります。
今後は英語によるウェブサイト、映像、文章などを通して、太極整体の考え方を海外へも発信していく予定です。
日本で長年研究し、実践してきた太極拳の身体原理を、現代の人が理解しやすい言葉に置き換え、国や文化を越えて共有していきます。
太極整体は、これから育っていく活動です
太極整体は、完成した方法を一方的に広めるための活動ではありません。
書籍を読んだ方。
映像をご覧になった方。
体験会へ参加された方。
スポーツや介護、教育の現場で身体と向き合っている方。
さまざまな人との出会いを通して、太極整体はさらに深まり、社会の中で必要とされる形へ育っていくものだと考えています。
その中心にある考え方は、これからも変わりません。
身体を新しくつくるのではなく、
身体がすでに知っていることを思い出す。
外から正しい形を与えるのではなく、
内側から自然な秩序が戻ってくるのを助ける。
そして、誰かの特別な力に依存するのではなく、
一人ひとりが自分自身の身体を発見していく。
私は、そのための先生というよりも、道を示す案内人でありたいと思っています。
もとのからだを思い出す
太極整体の始まりは、特別な技ではありません。
ただ立つことです。
そこから、歩くこと、呼吸すること、動くこと、支えることが変わり始めます。
そして、その先には、人間が本来持っている、まだ十分に知られていない身体の可能性があります。
書籍、YouTube、SNS、講演会、体験会などを通して、その世界を少しずつ皆さまへご紹介していきます。
太極整体のこれからの活動に、どうぞご期待ください。


